小児低身長症の診断・治療
Nanism Treatment and Therapy
当院では小児低身長症の診断・治療を積極的に行っております。
子供の成長
Groth of Children
子供の成長には、必要なものがたくさんあります。中でも次のものが大切です。「寝る子は育つ」というのは、よく言われたものです。
- 十分な栄養、睡眠と運動
- 成長ホルモン
- 性ホルモン
時期別にみると
- 乳幼児期では栄養
- 小児期(4才頃から思春期)は成長ホルモン
- 思春期では性ホルモン
の影響が大きいです。
特に、成長ホルモンは成長には大切なホルモンです。これが不足すると栄養をきちんと摂っていても、身長が伸びなくて低身長をきたします。

低身長症の目安
Decision of Nanism
低身長は同性、同年齢の子供さん統計的な標準値と比較して判断します。標準偏差(SDといいます)を基準にマイナス2SD以下(100人の子供さんに対して2人ぐらい)をいいます。
年齢 | 女子 | 男子 | 年齢 | 女子 | 男子 |
---|---|---|---|---|---|
3歳 | 84.3 | 86.0 | 9歳 | 118.7 | 119.7 |
3歳半 | 87.9 | 89.2 | 9歳半 | 121.1 | 122.2 |
4歳 | 91.0 | 92.2 | 10歳 | 123.9 | 124.6 |
4歳半 | 94.5 | 95.2 | 10歳半 | 126.7 | 126.9 |
5歳 | 97.8 | 97.8 | 11歳 | 130.3 | 129.0 |
5歳半 | 100.5 | 100.6 | 11歳半 | 133.7 | 131.1 |
6歳 | 103.5 | 103.7 | 12歳 | 137.0 | 133.9 |
6歳半 | 106.7 | 106.7 | 12歳半 | 140.3 | 136.7 |
7歳 | 108.8 | 109.4 | 13歳 | 142.2 | 140.7 |
7歳半 | 111.5 | 112.3 | 13歳半 | 144.3 | 144.6 |
8歳 | 113.8 | 114.7 | 14歳 | 145.2 | 148.6 |
8歳半 | 116.3 | 117.1 | 14歳半 | 146.2 | 152.5 |
簡単には成長曲線に描いてみると分かります。
成長曲線はこちらからダウンロードできます。
ファイザー製薬|
日本イーライ・リリー社|
大日本住友製薬
低身長症の原因
Cause of Nanism
低身長の原因には以下のようなものがあります。
- 特発性(原因不明)
- 胎内発育不全
- 成長ホルモン分泌不全
- 甲状腺機能低下症
- 染色体異常・遺伝性疾患
- 慢性腎不全
低身長症の95%は原因がはっきりしなく、特発性低身長症と呼ばれます。残り5%が病気でおこります。 甲状腺機能低下症は多くは新生児スクリーニングで発見され、早期に甲状腺ホルモンの補充を行えば、その後の発育は順調です。
成長ホルモン分泌不全症は成長ホルモンが少なくなって低身長となる病気で、不足した成長ホルモンを注射で補うとその後の成長は改善します。この病気は10万人あたり50人ぐらいと考えられています。 その他、染色体異常であるターナー症候群や遺伝性疾患であるプラダー・ウィリー症候群、軟骨無形成症、軟骨低形成症、そして慢性腎不全性低身長症でも成長ホルモン治療が認められています。
成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断
Growth Hormone Deficiency
以下の流れで行います。
- 両親の身長、出生時の状況、栄養状態や今までの病気など聞いて、成長曲線を作成します。
- 現在の身長体重を測定してマイナス2SD以下(1000人中前から20番目くらい)であるのか評価します。
- スクリーニング検査をします。
- 一般血液検査
- 甲状腺ホルモン検査
- 成長ホルモンとIGF-1(別名ソマトメジン、成長ホルモンにより作られる成長因子)検査
- 左手のレントゲン写真による骨年齢検査(成長ホルモン欠乏があると骨の年齢が遅れます)
- 女性の場合は染色体検査(ターナー症候群が疑われる場合)
- 二次検査(精密検査)
- 一般血液検査、甲状腺ホルモン検査に異常がなく、IGF-1が低く骨年齢が遅れている場合 成長ホルモン分泌不全を疑い、精密検査を実施します。
- 成長ホルモンがでるようなお薬を使って、成長ホルモン分泌刺激試験を行います。
- 2つの検査で成長ホルモンの分泌が不十分なときに、成長ホルモン分泌不全症と診断されます。
成長ホルモン療法
Growth Hormone Therapy
不足している成長ホルモンを注射で補い、身長の伸びをうながす治療法です。 骨が固まってからでは効果は期待できません。できるだけ早く開始したほうが大きな治療効果が期待できます。
成長ホルモンは注射で補います。病院ではなく自宅で行います(在宅自己注射といいます)。 治療を続けていても、日常生活に特別な制限はありません。 投与量は病気ごとに決められています。1週間の投与量を計算して、1回の注射量と1週間に何日(6か7日が多いです)注射するかを決めます。
治療費について
Treatment Cost
基準を満たせば「小児慢性特定疾患」に認定され公費負担が認められています。 マイナス2.5SD以下(1000人中前から6番目くらい)で、成長ホルモン分泌不全の基準を満たすことが必要です。
- 必要な書類は保健所でもらえます。主治医が記入した意見書、課税証明書、住民票などの書類を提出します。
- 審査に合格すれば医療券というものが送られてきます。それを医療機関に提出すれば手続き完了です。
- 年に1回、治療継続のための申請手続きが必要です。
- マイナス2SD~2.5SDの場合、公費負担の対象とはなりませんが保険診療が可能です。高額医療といって1ヶ月間の医療費がある基準を超えた額が戻ってきます。名古屋市内にお住まいの方は、小学6年生までは医療費の自己負担額を助成して頂けます。